「俺の人生、どこで間違っちゃったんだろう・・・」
泣きはらした目で、夕日を眺めながらそう思った。
これから語るのは数年前に起きた、ノンフィクション物語です。
ユーゴ物語 -自己犠牲編-
[第1話]どこで人生、間違えたのだろう
[第2話]1億5千万円の売上
[第3話]景色が灰色になった日
[第4話]海外でホームレス?
[第5話]灰色の人生に彩りを ←いまここ
[第6話] 人生のパターン
刻一刻と膨らむ損金
新婚旅行の初日にサブプライムでドルが暴落。
パソコンのマイナスの額は刻一刻と増え続ける。
自分がなんとかしなきゃ。
どれだけ水を飲んでも口の中はカラカラ。手は震える。
投資の先生の朝田さんに国際電話をする。
「あの、すごいことになっていて・・・」
「えーー!決済してなかったの?」
先生の指示を仰ぐ。
「これまでに起きたことがないので、なんとも言えない
でも言えることは、暴落した後は必ず少し戻る。
戻りきったタイミングで損切りをする方法がある。
ただ・・・いつ戻るかわからない。
それが果てしなく先だと強制終了で借金を背負うことになる」
明け方の4時頃に戻りそうだと予想。
いつでも損切りできるように、瞬きせずパソコンを睨む。
時計のカチ・・・カチ・・という音とともに
-154・・・-156・・・-160・・・と数字が進む。
指が震えてクリックしそうになる。危ない。
明け方4時、集中力が切れてウトウトしそうになる。
今寝たら大変なことになる!
立ち上がってパソコンを抱えながら睨む。
来た!反転した!
-174・・・-152・・-130・・・すごい勢いで戻る。
「このままゼロになってくれ」
願いも虚しく-120あたりでストップする。
もっと粘りたいが、そういうわけにもいかない。
損切り・・・120万が溶けた。
口座残高は30万円。
繰り返し言うが、これが3ヶ月の新婚旅行
そして帰国してからのビジネスのお金だ。
帰国チケットは45日後まで使えない。
単純計算すると一日あたり7,000円。
もちろん宿代含む。
今すぐ帰国チケットを買って帰ろうにも、少し予算オーバーだ。
帰国か、滞在か・・・。
「滞在しよう、節約じゃなくお金を作ろう」
方法はわからない。『やると仮定して方法を考える』のだ。
いまNYのカフェから書いています
当時、週に一度メルマガを書いていて
チャレンジの背中を見せたくて、リアルタイムで報告していた。
読者に何かを提供して、お金を貰えないか?
「そうだ!オンライン講座をリリースしよう」
そうと決めたら構想が湧いてきた。
涼しげな顔をしてメルマガを書く。
「いまNYのカフェから書いています」
「次のチャレンジを決めました!」
「NYの滞在中に、新商品をリリースします!」
観光に行くんじゃなく『住む体験』をしたい。
新婚旅行なのにそんなコンセプトだったのでちょうど良かった。
今では普通だけど、当時では時代の先をゆく『ノマドワーカー』です。
毎日必死にパソコンで作業する。
お金が減っていく恐怖に耐えながら
これも妻を守るためだ。
必死の形相で作業をしていた。
「ねえ、せっかくの新婚旅行なのに仕事しすぎ」
( ゚д゚)
そ、そうだった。新婚旅行だった。
妻を守るためとはいえ、確かにあまり相手をしてあげられていなかった。
(とはいえ少しずつ自分の中でモヤモヤが膨らんでいく)
心の余裕が無くなっている自分を感じつつも
相手の言い分も確かに、と思う。
日中の作業は減らし、彼女が寝静まってから作業する時間を増やした。
世界の中心で叫ぶ
「せっかくのNY!何したい?」
「そうだねー、したいことして良いよ」
本音は『一刻も早く仕事したい』だった。
でもそれって「仕事と私、どっちが大事なのよ!」のフラグだ。
自由の女神を見に行ったり。
エンパイヤステートビルに登って写真を撮ったり。
ブロードウェイミュージカルを見に行ったり。
新婚旅行らしいことをしてみる。
でも自分の中では「残りあと・・・万円」みたいな恐怖と戦っていた。
FXを損切りしたときの
カチ・・・カチ・・・と時計の音とともにマイナスが増えていく
その感覚とリンクして心から楽しめなかった。
『世界の交差点』として有名なタイムズスクエア。
彼女が叫んだ。
「もう!ぜんぜん楽しそうじゃない!」
「はぁ?誰のせいでこうなったんだよ!」
言いそうになってグッと言葉を飲む。
「なんで何も言ってくれないのよ!もうイヤ!」
走り去る彼女の手を掴む。
夜のNYで一人にさせるわけにはいかなかった。
口論しても改善するわけではない。
「ゴメン、俺も余裕が無くて・・・」
「もうヤダー!」彼女が泣き崩れる。
俺は黙ってワナワナするしかできなかった。
「それは○○の方が悪い」一般的には
そういう感想を持つ人が多い。
でも知っておいて欲しい。
「誰も悪くない」が正解。
「相手が悪い」も「自分が悪い」も
どちらも争いが終わらないのです。
誰も悪くない。
それぞれの思惑が噛み合わなかっただけ。
どっちも「相手を幸せにしてあげたい」なんだ。
この考え方に立ち返ることができたら
憎しみの連鎖が終わるってことを覚えておいて欲しい。
彼女には夢がある
「ねえ、ユーゴさんの背中ってすごい寂しそう」
彼女と付き合った頃、そう言われた。
「付き合う前の、大阪でお世話になった時思ったんだ
あぁ、なんて寂しそうな背中をしている人なんだろうって
顔は笑って強がってるけど、振り返って去って行く時
背中が泣いてるんだよね。
この人の人生って灰色なんだろうなって。
私がこの人の世界を彩り豊かにしてあげたいなって」
この物語は俺サイドに寄ってる書き方をしているから
彼女が俺を振り回してるように映るかもしれない。
でも、彼女は俺を幸せにしたくて
仕事以外の豊かな世界に連れ出したかったんだ。
彼女は悪く無い、俺も悪くない。
誰も悪くない。
誰もが「相手を幸せにしてあげたい」で動いてる。
でも思惑がすれ違うと、憎しみが生まれてしまうんだ。
少し険悪になった二人だが
お互い歩み寄ろうと話し合う。
「バランスが大事。観光に来たんじゃなくて『住む体験』をしに来た
普段はカフェで仕事、そしてたまに遊びに行こう」
なんとか努力のかいあって
NYからメルマガで新商品をリリースする。
安心できるほどの大きな売上ではないが
なんとか目処が立ち、ホッと胸をなでおろした。
節約しながらもNYでいろんなチャレンジをして
あっという間に45日が経った。
飛行機が離陸して、NYの街並みを見ながら彼女が言った。
「なんか、来る前よりお互いキライになったよね」
俺は無言で拳をギュッと握った。
夢を叶え続ける
帰国して、今度はインドに行った。
そちらでも様々なドラマがあったが
これまでほどではなかった(笑)
帰国して、さてビジネスを建てなおさなきゃ。
社長と副社長が不在にした穴は大きいぞ。
その時、彼女が言った。
「タワーマンションに住みたい」
『やると仮定して方法を考える』のと『できないと仮定して考える』のは大違い
もうこの言葉は自分の中で浸透した。
言われるまでもなく、自分の頭に湧いてくる。
調べてみると家賃が30万円、敷金と礼金が2.5ずつ。
つまり150万円必要になる。
「これぐらいのチャレンジならやったことある」
もう感覚がおかしくなっていた。
そして実際に、なんとかできてしまった。
全てのお金をはたいてタワーマンションに引っ越した。
その後はどうするんだ。
本当に必要なの?経営方針的に正しい?
「彼女の夢だから・・・」
誰かに意見されたらきっと俺はそう答えただろう。
高層階から夜景を眺めながら
なんだか涙が出てきた。
「いろいろあった。ホントいろいろあった。」
恐怖から逃げるように仕事ばかりしてきたけど
今は愛する妻を支えながら、色んなものが手に入ってきた。
少しは彩り豊かになったかな。
21歳の時、家族の縁を切る思いで東京に出てきたこと
仕事中毒で寝る間も惜しんで働いて死にそうになったこと
大きく活躍して自信を持ったものの、ウツで自殺しようと思ったこと
手を差し伸べてもらい復帰してこれたこと
妻とケンカしつつも支えあって冒険してきたこと
「もう、一人じゃない。大丈夫。大丈夫」
泣きながら夜景に乾杯した。
波乱万丈と言える人生を振りきって走ってきたけど
ようやく幸せを掴み涙するユーゴ。
当然ながら、まだ終わるわけがない(笑)
ここからまた下り坂が始まります。
■第6話に続く
ユーゴ物語
[第1話]どこで人生、間違えたのだろう
[第2話]1億5千万円の売上
[第3話]景色が灰色になった日
[第4話]海外でホームレス?
[第5話]灰色の人生に彩りを ←いまここ
[第6話] 人生のパターン