ユーゴ物語

[A第6話]人生のパターン

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「俺の人生、どこで間違っちゃったんだろう・・・」
泣きはらした目で、夕日を眺めながらそう思った。

これから語るのは数年前に起きた、ノンフィクション物語です。


ユーゴ物語 -自己犠牲編-
[第1話]どこで人生、間違えたのだろう
[第2話]1億5千万円の売上
[第3話]景色が灰色になった日
[第4話]海外でホームレス?
[第5話]灰色の人生に彩りを
[第6話] 人生のパターン     ←いまここ


成功者きどり

タワーマンションに引っ越し快進撃が続く。
メイン事業は『起業支援のスクール』

「好きなことで起業しよう」
時代の追い風があり売上も順調だった。

役員は4人ともカリスマ性があり
大御所も一目置いてくれるほど目立ってきた。

パーティーやイベントを開催すると
すぐ満席になるほどの人気だった。

 

俺は引き続き、他のスクールを立ち上げた。
『社会人向けのビジネススクール』
『セルフコントロールの心理学スクール』
『スピリチュアル能力開花スクール』

スクールはメイン事業を合わせて全部で4つ。
どれも順調だった。

自分の才能を実感したのもこの頃だ。
コンテンツ開発の才能と、スクール立ち上げの才能だった。
どうやらこの分野に関しては、人並み以上に成果が出るらしい。

栄枯盛衰、歯車が狂い始める

月収は250万を超え、羽振りの良さにも磨きがかかった。
「好きなことを仕事にしたらこんなに夢が叶うんだよ!」

多くの人の希望の的となるように
積極的に海外旅行に行って、それを発信し続けた。

しかしそんな生活も長く続かなかった。
311。大震災から風向きが変わった。

経済活動はストップし自粛ムードになり
「東京に人が住めなくなる?」「首都移転する?」
そんな噂も流れるほどだった。

「好きなことを仕事に」なんて言ってる場合じゃなく
メイン事業の売上が激減。
経営方針の大きな転換を検討せざる得なかった。

「俺が3つのスクールで売上を支えるから
その間に経営方針を練って次の一手を決めて」

漫画とかでよくある
「ここは俺に任せて先に行け!・・・うわああぁぁ」
みたいな自分をカッコ良いとも思った。

しかしこの時、自分は気づいていなかった。
過去と同じパターンを繰り返していることに。

19歳の頃、Web制作で売上を作って家族を支えた状況。
「なぜ俺ばかりが頑張らなきゃいけないんだ」と怒りが湧いた。

そのこと自体は素晴らしいことだし問題はない。
ただし自己犠牲で頑張り疲れたとき、怒るパターンだ。

実は、メイン事業だけでなく残りのスクール3つも
時流の煽りで売上が落ち込んでいた。

他の役員3人には次の一手に専念してもらいたくて
心配かけないよう、そんなそぶりも見せないようにしていた。

家賃と人件費で、毎月150万円が勝手に消えていく。
「今月の支払いどうしよう・・・ギリギリなんとかなった」
これを毎月、切り抜けてきた。

どうしても売上が作れなかった時
俺は禁断の金策に手を出してしまった。

会社の経費を、個人のクレジットカードで支払ったのだ。

「一時的な策だから、お金ができたときに経費精算すれば問題ない」
「社長&副社長の、夫婦の家計のカードだから、大きな問題ではないはず」

最初は一時しのぎだったのだが
資金繰りは悪化して、慢性化するのは時間の問題だった。

金額は増え続け、カードの負債は100万円を超えていた。

仲間が仲間じゃ無くなる日

ピリピリを隠せなくなり、人間関係は完全にギクシャクしていた。
もちろん夫婦関係も険悪になってきていた。

「支えるとは言ったけど、どれだけ経っても何の方針も無いのはなぜ?」
「そんなすぐに方針なんて見えるわけないじゃない!」

「せめて『支えてくれてありがとう』くらい言ったらどうだ」
「そんな風に言われたら、言いたく無くなる!」

これだけ見ると、大人げない人に見えるかもしれない。
だが・・・震災から2年が経とうとしていた。

毎月の支払いに胃を痛め、なんとかギリギリ間に合わせる。
それを2年も続けたら精神的にもおかしくなる。

周りの全員が敵に見えるようになってきた
「せめて『ありがとう』ぐらい言えよ!!!!」

俺は仲間のために頑張っている。
なのにどうして仲間は俺を厄介者扱いするんだろう。

俺は仲間をずっと助けてきた。
なのにどうして仲間は俺を助けてくれないのだろう。

あんな奴ら、仲間と呼べるのか?酷い奴らだ

完全に我を失っていた。
『先に仲間を辞めたのは俺だった』ことに気づいてなかった。

役員達に言われた。
「俺はこんなに、俺は頑張っている
いつも『俺は』『俺は』って自分のことばっかり。
もうウンザリなんだけど」

社長ではなく妻が口を開いた。
「最後のお願いがあるの。離婚して欲しい、もう手に負えない」

「・・・・わかった、申し訳なかった」

これまで沢山の夢を叶えてきた、お願いをきいてきた。
頼まれたら断らないで、仲間のために頑張ってきた。

その結果がこれ?
俺の努力は全部ムダだったの?

俺の人生、なんだったんだろう。
泣き崩れる気力もなく、放心状態だった。

どこで人生、間違えたのだろう

「俺の人生、どこで間違っちゃったんだろう・・・」
泣きはらした目で、夕日を眺めながらそう思った。

都内の某億ション。長年住んで見慣れた30階の景色。
この日、俺は全てを失った。

家も、仕事も、家族も。
「この感覚、昔にもあったなあ・・・」

21歳の全てを捨てて東京に出てきた時から
自分は何も変わってないんじゃないか?

いや、あの時は100万円のお金を持っていた。
今は、100万円の借金だけが残った。

夫婦の家計だから、一時的な建て替えだからと思ってカードを切った。
まさか離婚して自分の借金になるなんて思ってもいなかった。

退任時に精算させようかと思ったが
そんなお金なんてないことは自分が一番わかっていた。

会社と元妻に、押し付けることもしたくなかった。

「良いよな、お前らは、さんざん助けてもらって、夢を叶えてもらって!」
精一杯の叫び声だった。

でもやっと出た、これが本音だった。
19歳の頃から、ずっと誰かに助けて貰いたかったのは自分だったんだ。

羨ましかったんだ・・・。

自分がして欲しいから、誰かを助けてあげたい。
痛みがわかるからこそ、誰かを助けてあげたい。

「あれ・・・俺、誰かに『助けて』って言ったことあったかな」

ずっと強がって、自分の力でなんとかして
誰かを見ては手を差し伸べて・・・。

「じゃあ、今度は俺も助けてもらって良い?」
なんでその一言が言えなかったのだろう。

自己犠牲の物語

このユーゴ物語は『自己犠牲』がテーマのお話です。

自己犠牲で人助けをすると
最終的には相手を傷つけてしまう。

最初は「手伝ってあげたい」で始めたのに
犠牲感に疲れると、とたんに相手を責め始めてしまう。

そう、最初は親切心とか貢献欲求だったのに
途中から犠牲感にすり替わってしまっていたのです。

これは私だけに限らず
責任感が強い人、世話焼きの人の人生のパターン。

親切心や貢献欲求だけなら
「ありがとう」が無くても文句は出ない。

でも自己犠牲になってくると
「ありがとう」が無いと文句が出る。

最初は見返りなんてなくても良かったのに
ある瞬間から見返りが必要になる。

それが自己犠牲になる瞬間なのです。

自己犠牲していることに気づけないと
成果を出せば出すほど
人間関係を破壊することになってしまうのです。

自己犠牲は誰しもクセとして持っています。
いまこの瞬間、犠牲感を感じていることはありませんか?
この物語を通じて何か1つでも気づくことができれば幸いです。

エピローグ

あれから3年。
私は、郊外の自宅の庭から夕日を眺めていた。

あーちゃんとみーちゃん

庭では、ミニチュアダックスのあーちゃん(犬)と
スコティッシュフォールドのみーちゃん(猫)が遊んでいる。

「ごはんできたよー」
妻が呼ぶ声が後ろから聞こえる。

無理な華やかな暮らしではなく
地に足ついた、自分に嘘のない生き方を心がけている。

あれからすぐに今の妻と出会い、スピード結婚を果たした。
もちろん不安はあった。

「また自分だけが頑張ってしまうのではないか」
「また誰もが去って、また一人きりになるのではないか」

自分の人生パターンだから
自分が変わらなければ、どんな相手とも同じことを繰り返す。
同じ過ちを繰り返すことがとても怖かった。
振り回した相手に申し訳ない。

「同じ自分では繰り返す、何か1つ変えるとしたら・・・」
しっかり自分の人生パターンと向き合って
1つ、これだけは大事だと思うことを決めた。

それは
『何があっても、自分で自分を幸せにする』こと。

死ぬ瞬間、
仲間に恵まれなかったから不幸だった。
誰かの役に立てなかったから不幸だった。
お金が無かったから不幸だった。
運が悪かったから不幸だった。

そんなの理由にならない。

孤独だろうが、運が悪かろうが
お金がなかろうが、愛されなかろうが
自分で自分を幸せにすることができれば
「完璧ではないけど、幸せだった」と言いながら死ねるはず。

自分で自分を一番に幸せにした状態で
愛する家族に囲まれて
仲間に囲まれて
人生が充実して
お金も余裕があって・・・。

これが大事なんだ。

自分で自分を鞭打って追い込んだ状態で
愛する家族に囲まれて
仲間に囲まれて
人生が充実して
お金も余裕があって・・・。

これでは周りに心配かけながら
「まだ足りない」「まだ足りない」と言ってしまう。
『与えよ、さらば与えられん』という言葉がある。
嘘ではないだろうけど

余裕がない人が与えると
与えられたものを見て「足りない」と言う。

余裕がある人が与えると
与えられたものをさらに、他の人に与えるようになる。
「俺はあなたを『一番に幸せにします』なんて言えません。
『自分を一番に幸せにする』ということをしたうえで、あなたを大事にします。
それを怠ると、きっとあなたを傷つけてしまう。
 だからこの生き方、一緒にどうですか?

俺は妻にも、仲間にも
そして『あなた』にも、この生き方を提案したい。

たとえ周りが愛してくれなくても
自分で自分にしっかり愛を注ぐ。

たとえ周りの全員が敵に回っても
自分が自分にとって一番の味方でいる。

たとえあなたのファンが1人もいなくても
自分が自分にとって一番のファンでいる。

そんな自分で居る限り
愛されるし、味方にもファンにも恵まれる。

一番怖いのは、自分が自分の敵であること。
味方がどれだけいても、強い孤独を感じてしまう。
もし、自分が自分の一番のファンという感覚がわからないのであれば
まず私が、あなたの1人目のファンになります。

だから少しずつ、
自分を愛する・自分を幸せにする
ということを、一緒に練習していきましょう。

私もまだまだ、練習途中で完璧ではありません。
もしよければ一緒に取り組んでいきませんか?

『自分で自分を幸せにする』
そんな人同士が手を助け合う世界を作りたいのです。

あなたの力を貸して貰えませんか?
『助けて』もらえると嬉しいです。

 

ユーゴ物語 -自己犠牲編- [完]

 


ユーゴ物語
[第1話]どこで人生、間違えたのだろう
[第2話]1億5千万円の売上
[第3話]景色が灰色になった日
[第4話]海外でホームレス?
[第5話]灰色の人生に彩りを
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